今年(2007年)の夏は75年ぶりに最高気温を更新するなど猛暑・酷暑が続きました・・・・これも温暖化の影響でしょうか。
夜も熱帯夜が続くと(クーラーがないせいもありますが)、十分な睡眠をとれずお陰で頭がぼう〜〜としっぱなし。こんな時は普段見ることがない幻想や白日夢が見えてくることがあります。昔から夏の夜には魑魅魍魎(ちみもうりょう)や幽霊、妖怪など異界の存在と接近遭遇するいいますが、これも暑さで意識が朦朧としていたからでしょうか。しかし、こうした妖しいものたちを怪談話にして消夏法の一つにしていた日本人はお化けたちにとっても怖い存在だったかもしれません。一方、西洋では・・・
英国の大戯曲家ウィリアム・シェークスピアの「真夏の夜の夢」では森へ迷い込んだ2組の恋人たちが恋の媚薬によって恋人を取り違えさせられたり、妖精の王妃がロバの頭をかぶせられた職人に惚れさせられたりするなどドタバタの後で大団円となる恋のゲームのめでたいお話(あらすじはここをクリック)。
後にメンデルスゾーンがこの戯曲を元に作曲したのが「夏の夜の夢」。結婚式で奏でられる結婚行進曲もこの中に入っています。
20年ほど前(1989年7月)、この劇を高田馬場の「グローブ座」で観ました。演出:木野花(NHK朝の連ドラ「ドンと晴れ」のナレータです)、出演:第三舞台。媚薬をかけるいたずら妖精パックの役は当時まだそれほど有名でなかった久本雅美でした。
今回は、夏の夜を美しく妖しく彩る花々をお届けします。
月下美人 (ゲッカビジン) 1年に一度、真夏の満月の夜にしか開花しないという月下美人。夕方6時頃より開き始め、10時過ぎに満開となり、12時を過ぎるともう萎み始めます。まるでシンデレラのよう。 サボテンの仲間です。雨が降るまで何年も種のままで過ごし、たまにしか降らない雨に一斉に開花する砂漠の花の遺伝子を受け継いでいます。 (世田谷区 祖師谷) |
← 満開の月下美人 (世田谷区祖師谷) 月下美人は年に1回しか咲かないのではありません。6月から11月ごろの間に何度か咲きます。11月頃は朝まで咲いています。 下は11月の月下美人。 昨夜の激しい逢瀬の後のようで、何か眠そうですね。 (世田谷区砧) |
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年に数回、それも一晩だけしか咲かない花なので開花に出会うのは難しいのですが、つぼみの生長を見ていると何時ごろ咲きそうか見当がつきます。開花1週間前のつぼみはこんな形です。 サボテンの仲間なので結構育てやすく、葉を挿しておけば3年くらいで花を付けます。 |
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孔雀仙人掌(クジャクサボテン) 月下美人と同じ仲間ですが、こちらは昼に咲き、虫を集めるために艶やかな色を装います。虫にとって白日夢です。 (港区南青山) |
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「真夏の夜の夢」の舞台はアテネ近郊の森ですが、ギリシャへ行ったことがないシェークスピアはロビンフッドが住んでいたシャーウッドの森のような、大きな木々や苔が生える暗い森を想像していたと思います(夏の地中海地方は乾燥のため草木は冬のように枯れていますから)。ちなみにいたずら妖精パックはロビン・グッドフェローとも呼ばれています。 |
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この絵は1849年に英国の画家JNパトロン卿が書いた「口論するオベロンとティターニア」。うっそうとした英国の森のイメージです。ティターニアの後ろに隠れている「取替え子」をオベロンが自分によこせと要求しているところです。彼らの周りにいるのが妖精たち。豆の花や蜘蛛の巣、蛾の羽根など様々な妖精がいますが、これが英国人の妖精イメージの原型となりました。 子供の頃、こんな絵本を見た憶えがありませんか・・・ シシリー・メアリー・バーカー「花の妖精」 |
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ピーターラビットの絵本を書いたビアトリクス・ポターなど20世紀初頭の英国では動植物を擬人化した絵本が多く出版されました。シシリー・メアリー・バーカー(1895-1973)は花の妖精を数多く描きました。庭や田園を愛する英国人ならではです。(絵本をクリックすると花の妖精が出てきますよ) 花の妖精たちをご紹介しましょう。 |
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黒薄荷(ブラックミント) オフィスのベランダで植えています。 葉を摘んで、グラスの底ですりつぶし、ラム酒と砂糖をいれ攪拌し、砕いた氷を入れてからとライムジュースをいれると・・・モニートの出来上がり。 ミントとラム酒の種類を変えると色々の味のモヒートができます。夏の夜を堪能しました(飲みすぎて夢の中でした)(港区南青山) |
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ホースミント (渋谷区代々木公園) |
ボックセージ (渋谷区代々木公園) |
ミントはしそ科。この他、キャットミント、テイルミント、アップルミント、パイナップルミント・・・いろいろな種類のミントがあります。それぞれ匂いや香りは少しずつ異なっていますし、用途も違います。代々木公園のセージ園で楽しめます。 |
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蛍袋(ホタルブクロ) 日本では蛍のお宿ですが、西洋ではきっと妖精のベット。 (世田谷区瀬田フラワーランド) 東宮御所の正門前にもたくさん咲いています。 |
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庭石菖(ニワゼキショウ) 5mmくらいのかわいい花です。5月頃庭にたくさん顔を出しますが、一日で萎んでしまいます。 (港区赤坂アメリカ大使館住居南部坂土手) |
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百合の樹(ユリノキ) 街路樹(オフィスの近くの外苑東通りには立派な大木になっています)として使われる木ですが花を見る機会は余りありません。チューリップトリーとも呼ばれているように花はチューリップの形に似ています。 木全体に咲いている様子は葉の上で妖精たちが遊んでいるようです。 (新宿区新宿御苑) |
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青山葬儀所前の百合の木の街路 20mくらいの大木になっています。 この木の根元にアケビを植えました。 何年かたったら実がつくでしょう。 |
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花手鞠(ハナデマリ) (世田谷区砧) | トリトマ (世田谷区瀬田フラワーランド)) |
さて、この妖精の名は・・・ (港区赤坂) |
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銀梅花(ギンバイカ) 別名: マトール(Myrtle) 地下鉄銀座線の溜池山王駅13番出口の前の花壇に潜んでいました。ハーブの一種です。野田さまからのご報告。 |
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妖精たちは水辺で水遊び |
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睡蓮(スイレン) (新宿区新宿御苑) こちらは木の上の睡蓮 睡蓮木(スイレンボク) (港区南青山) |
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西洋の「真夏の夜」は陽気でエロチックで、祝祭的な趣きがありますが、これも短い夏の夜を精一杯楽しもうという現れでしょうか。 一方、日本では・・・お岩さんで有名な「東海道四谷怪談」(鶴屋南北作)、お菊さんが「一枚〜〜、二枚〜〜」と皿の数を数える「番町皿屋敷」など、オドロオドロシイ怪談話で、背筋が寒くなるものばかりです。これもクーラーがなかった昔、汗がべっとりと張り付く熱帯夜を少しでも過ごしやすくしようという庶民の知恵でしょうか。どうもカラッとしません。その中でも三遊亭円朝作の「牡丹燈籠」は身分違いの悲恋をベースにした艶っぽい話です。(あらすじはここをクリック) 牡丹(ボタン) (世田谷区砧) |
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風船蔓(フウセンカズラ)(世田谷区瀬田) | |
お化け絵は今や水木シゲルが大御所ですが、江戸時代の絵師円山応挙が鶴屋南北の怪談をベースに書いたのが始まり。青白い顔で、両手をだらんと垂らして「うらめし〜〜〜や〜〜〜」。 南蛮煙管(ナンバンギセル) (新宿区新宿御苑) だらんと垂れたところがお化け的。それもそのはずススキに取り付いて(寄生して)咲きます。 |
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古くは「思い草」といいました。(吉川さんからのご報告) なるほど(死後も)思い続けるから化けて出るわけですね。 |
(円山応挙の幽霊) |
黄鴉瓜(キカラスウリ) 秋に赤い実のなるカラスウリ。 カラスしか食べないためこんな名がついたのでしょうか。 黄泉の国から来た八咫烏。元々カラスは不吉な鳥。 そして後朝(キヌギヌ)の別れを知らせる明けガラス。 カラスウリはもう少し髭が長くレースのようです。 (野田様からのご指摘) しかし○×星人のように少しグロイですね。 (世田谷区経堂) |
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鷺草(サギソウ) 私が住む世田谷区の花です。 この花も常盤姫の化身とする悲しい伝説を持っています。(伝説あらすじはこちらをクリック) (立川市昭和記念公園) 野田様からの頂き物です。 囲碁のことを「烏鷺(うろ)の戦い」とも言いますが、花だと白だけで戦いになりません。やはり花は平和主義者。 |
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短かった夏の夜も白々と明けてきました。 亡霊たちも閻浮(えんぶ:この世のこと)に別れを告げ、帰ってゆきます。後には一輪の 朝顔(アサガオ) (世田谷区大蔵) |
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怪談に出てくる幽霊たちは夏しか出ないという季節性がありますが、能に出てくる亡霊たちは一年中出てきます。 そして最後に「あと弔いてたび給え」と成仏を頼んで消えてゆきます。うまく成仏できると蓮の台で暮らすことができるようになります。 |
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蓮(ハス) (台東区不忍池) | |
演能のご案内 |
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9月16日(日) 12時より 神楽坂の矢来能楽堂で能「経政」を披(ひら)きます。 三連休の中日ですが、ご興味やお時間があれば見学にいらしてください。 下と同じ衣装と面を付けてシテを勤めます。 詳しくは下の写真またはここをクリックしてください。 |
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経政 琵琶の型 (金春流 箕輪 扶由子) |
「なに花な?」コーナー
今回もいくつか名前が分からない花がありました。その中で妖精的な花を下に載せましたの、ご存知でしたら教えてください。
例えば・・・
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B | C |
(写真をクリックすると拡大します) |
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「何かな、なに花な?・・・」のページにも不明な花の写真を載せてありますので、もし、ご存じならば教えてください。
ココをクリック、または http://www.insite-r.co.jp/Flower/unkown/