春はどこから来るのでしょう?
都会に住む人にとっては、「花屋の店先」が正解ですが・・私が育った田舎(能登半島の付け根)では、春は雪の融けた里山から足音を忍ばせて密やかにやって来ました。
都会でも多くの野鳥が見られるようになりましたが(先日、マンション中庭のケヤキでチョウゲンボウが小鳥を食っていました)、これまで余り見られなかった山野草も数多く都市へ移住しています。
今回は、山野から春を運んできてくれる花の使者たちをご紹介します。
片栗 (カタクリ) 雪が融けた林にピンクの絨毯を敷いたように咲く片栗。 日光にあたると花弁が反り返ります(このときは曇り)。 料理に使う片栗粉は、もともとこの球根から取ったものですが、現在はジャガイモの澱粉で作られています。 5年前、友人とニューヨークのハドソン川南岸を散策したとき黄色いキバナカタクリを見ました。 (岩手県平泉町中尊寺) |
猩猩袴(ショウジョウバカマ) カタクリの近くで咲いていました。 猩猩とは中国の伝説上の動物で、人語を話し、またお酒が大好きなめでたい動物です。 能の「猩猩」では、お酒に酔った猩猩がふらふらとした足つきで舞を舞う仕草があります。これは結構難しい曲で、3大秘曲のひとつになっています。また、衣装は足袋を除いてみな赤い色です。 花は猩猩の頭のようで、葉が袴の襞のように見えるところから名付けられました。 (岩手県平泉町中尊寺) |
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錨草(イカリソウ) 突き出した花弁(距(きょ)といいます)が錨マークのように見えるところから錨草。苧環(オダマキ)にも似ていますね。 錨マークは神戸の摩耶山の中腹に、神戸市章と並んで描かれています。 (世田谷区砧公園) |
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通草(アケビ) アケビは実が食用になるほか、蔓(ツル)は工芸品(野沢の鳩車が有名)や生薬の材料に利用されます。一昨年、田舎で取ったアケビの種をまいたところ、ちゃんと芽が出てたので、近くの公園や街路樹の下に移植しましたが、悲しいことに皆公園整備員に刈られてしまいました。 (文京区小石川植物園) |
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岩団扇(イワウチワ) 葉が団扇の形。 (岩手県平泉町達谷西光寺) |
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春先の花は薄紫や薄いピンクが目立ちますが、いえいえ、こんな色の花もあります。 |
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座禅草(ザゼンソウ) 長い冬が明けると、達磨大師のように林間に座禅を組んで悟りを得る・・・赤い苞(ホウ)の中に、花が座禅を組んだようにちょこんと座っています。 水芭蕉(ミズバショウ)とおなじサトイモの仲間、水辺に生えます。 (岩手県平泉町達谷西光寺) |
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菊咲一華 (キクザキイチゲ) 1本の茎からひとつの花しか咲かないので、一華。 高山植物のひとつですが、東北地方では低山でも生えています。白花もあります。 (岩手県一関市厳美峡) |
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ではひとつの茎から2つの花が咲くと・・・ 二輪草(ニリンソウ) 咲いている花は一輪ですが、葉と茎の間に つぼみが出ています。 (世田谷区砧公園) |
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一人静(ヒトリシズカ) 「静」とは義経の側女であった静御前のこと。白拍子装束の姿で一人舞台に佇んでいるようです。吉野静の別名があります。 また、二人静(フタリシズカ)もありますが、二輪草のように花が二つ。 「二人静」という能もありますが、これは静御前が憑依した里女と静御前の亡霊が一緒に舞うシンクロ能です。 茎は通常は紫褐色ですが、このヒトリシズカの茎は緑色で青軸ヒトリシズカといわれる珍しい種です。 (世田谷区砧公園) |
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草だけでなく木々も花をつけ、春を準備をします。 |
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木五倍子(キブシ) (新宿区新宿御苑) 実から黒い染色が採れ、フシ(五倍子)の代用として使われたことから木の五倍子(フシ)という名が付けられました。本来のフシ(五倍子)はヌルデという木にアブラムシの一種が寄生して出来るコブで、その中にタンニンが含まれており黒色の染料として使われます。 一斉に咲く花は木全体がすだれになったようです。 (多摩市諏訪) |
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小楢(コナラ) ドングリの実のなる木です。木は椎茸の原木に使われるほか、再生能力が高いため薪(バイオマス)にもなります。また、雨水の保有力も高く、とてもエコな木です。 (皇居北の丸公園 日本武道館前) |
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文部省唱歌の「春が来た」(作詩:高野辰之、作曲:岡野貞一)では、春はまず山に来て、次いで里に、そして最後に野に来ます。野原の春の使者たちです。 |
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土筆(ツクシ) スギナの胞子体がツクシ。 夏の間はスギナの葉や茎で栄養を作ります。 ツクシの御浸しは春の野草料理ですが、 花粉症にも効果があるようです。 (宮城県松島西行返しの松) |
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大犬陰嚢(オオイヌノフグリ) 別名:瑠璃唐草(ルリカラクサ) 日本の在来種のような花ですが、帰化植物。学名Veronica persicaにペルシャが付いている様に中東アジア発、ヨーロッパ経由で日本に入ってきました。 私の好きな花のひとつです。 (港区南青山公園) |
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仏の座(ホトケノザ) (港区南青山公園) 雑草なのですが、どこか愛嬌があって不思議な形の花をつけます。蓮の台座(蓮華台)に立った観音を現しているのでしょうか。春の七草のホトケノザはこの花ではありません。田平子(タビラコ)というキク科の植物(タンポポの仲間)です。 |
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菫(スミレ) 一口にスミレといっても、実は日本には50種類以上あります。 このスミレは「立坪菫(タチツボスミレ)」で日本中どこでも見られる花です。 (渋谷区神園オリンピックセンター前) |
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立浪草(タツナミソウ) |
垣通(カキドオシ) |
花の並びが並みの形に似たところから。 (世田谷区瀬田フラワーパーク) |
繁殖力・生命力が強く、垣でも通すことから。 (岩手県一関市厳美峡) |
(余談) 「春が来た」の作詩者、高野辰之は「朧月夜」や「春の小川」の作詞も行っています。故郷の長野県中野市あたりの光景を思い出して、詩を作ったといわれていますが・・・実は東京音楽学校教授時代に住んでいた渋谷区上原〜代々木八幡あたりの風景でした。ちなみに、小田急代々木上原駅には「朧月夜」の壁画がありますし、代々木八幡駅近くの暗渠は「春の小川」だったようです。 歌碑 今は埋められて暗渠となった小川 |
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元の小川に戻す運動が起きますように・・・・ | |
ホップ、ステップと助走してきた春はここで一気にジャ〜〜ンプ!桜をはじめ、春の華麗な円舞曲を奏でます。全部を載せ切れませんので代表として 石楠花(シャクナゲ) (世田谷区砧) |
リンクコーナー
里山の記憶
マンション建設で崩される里山やそこで暮らす生き物の営みを愛しみ、思いを綴ったusakoさんのブログです。
「なに花な?」コーナー
今回もいくつか名前が分からない花がありました。不思議な花もありました。ご存知でしたら教えてください。(花の名前を教えていただきました。ありがとうございました)
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グレビレア・ユニペリナ(別名:羽衣の松) 野田様からのご報告 |
ナルシッサス バルボコディウム (別名:ペチコート水仙) 野田様と仲山さんからのご報告 |
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(写真をクリックすると拡大します) |
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「何かな、なに花な?・・・」のページにも不明な花の写真を載せてありますので、もし、ご存じならば教えてください。
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