♪秋の夕日に照る山紅葉、濃いも薄いも数あるなかに~(文部省唱歌)
茜色の夕焼け空、赤とんぼ、そして柿の実・・・秋のキーカラーは赤。赤といってもピンクやスカーレットでなく、朱色(バーミリンオン)、神社の鳥居や赤鉛筆の色のイメージです。
春から夏に花を付けた木々の実が赤く色づき、虫や鳥、獣たちに「食べ頃です」と信号を送ります。種の保存のために自然が与えた共生ルールです。(女性が使うルージュの口紅も同じ効果・・・と考えるのは考えすぎでしょうか)
人間も自然から秋の恩恵をお裾分けしてもらっているのですが、最近はもらう一方でお返しすることが少なくなっています(環境破壊と呼ぶ人も多いようです)。
秋は山から・・・巷にまだ夏の余韻が残る9月中旬、3000m級の高山では早い秋が始まっています。秋のシルバーウィーク(2009年9月19~20日)南アルプス北部の鳳凰三山に登りました。来年の北岳縦走に備えた下見でしたが早い秋に出会えました。舌で味わう秋も嬉しいですが、目一杯の秋をどうぞ。
高嶺七竈 (タカネナナカマド) 7遍竈に入れて燃やしても燃えない所からこの名が付きました。 高山の寒風に耐えて生長するにはそのくらいの芯の強さが必要なのかもしれません。 (山梨県南アルプス市 鳳凰三山薬師岳 /標高2780m) 紅葉した七竈の葉 (クリックで拡大) |
山では葉や木の実が色づく頃でも、里や街ではまだまだ花々が紅色の主役です。 |
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姫凌霄花(ヒメノウゼンカズラ) (港区南青山) | ||
千日紅(センニチコウ) (世田谷区大蔵) |
縷紅草(ルコウソウ) (世田谷区桜丘) |
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赤紫の花もありますが、こちらの方が名にあっています。 |
「縷」とは糸のことで、葉の形が糸状です。 |
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鶏頭(ケイトウ) (渋谷区代々木公園) 花の襞が鶏冠に似たところから |
葉鶏頭 (ハゲイトウ) (世田谷区北沢川緑道) 別名:雁来紅(がんらいこう) |
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サルビア |
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6月頃から咲き始めますが、秋のイメージがあるのは何故でしょうか? 花の色のせいか、それとも 「♪いつもいつも思っていた サルビアの花を あなたの部屋に投げ入れたくて・・・・」(「サルビアの花」相沢靖子作詞、早川義夫作曲)の感傷的なメロディーのせいでしょうか。 (世田谷区代沢) |
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キャットテール 別名: アカリファ・ヒスパニオーラ イネ科の「エノコロ草(猫じゃらし)」のように見えますが、 トウダイグサ科で「紅紐の木(ベニヒモノキ)」の仲間。 これでチョコチョコすると猫はとびついてくれるかな? (世田谷区瀬田フラワーパーク)) |
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花水木は、赤花からでも、白花からでも赤い実ができます。花の色と実の色はリンクしていません。他の動物に食べてもらって種子を遠くに運ぶタイプの植物が「目立つ」紅色をつけます。 常盤山樝子(トキワサンザシ) 別名: ピラカンサ、西洋山樝子 春に小さい白い花をたくさんつけます。この実には青酸系の毒があり、また味も苦いので余り鳥に食べられません。同じ仲間で橘擬 (タチバナモドキ)(Pyracantha angustifolia)は、中国では「冰糖葫芦」(ビンタンフーロゥ)というりんご飴みたい菓子や生薬(心臓病や胃腸病)になります。 (世田谷区砧) |
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梅擬(ウメモドキ) 擬の名の通り、梅の仲間(バラ科)ではありません。 葉が梅の葉に似ているところから名付けられました。 本当はモチノキ科で、仲間にクリスマスに飾る柊(ヒイラギ)があります。この科の実は総じて赤い色です。 (千代田区皇居東御苑) |
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権萃(ゴンズイ) (渋谷区代々木公園) 材が脆くて役に立たないので、同じように役立たない魚の権瑞(ごんずい)の名が付けられたという。毒もあり、ゴンズイ玉としても有名な魚にとっては迷惑な命名。 魚のゴンズイ(ゴンズイ玉)
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なんと言っても秋の紅色は楓紅葉。10月にはいって紅葉便りが届き始めましたので、体育の日に日帰りで金峰山(山梨県北部で長野との県境、海抜2599m)に登ってきました。前日の荒天(霰が降りました)が嘘のような良い天気でした。 朝日岳から望む金峰山 (南アルプスをバックに、右から山頂とホクロのように見える五丈岩) -クリックで拡大
霜柱や積もった霰が溶け出した山道はぬかるんでいましたが、初冠雪の富士山を満喫できました。 稜線部は針葉樹と岩道で紅葉はありませんでしたが、大日岩から瑞牆山に向かって下り始めてから紅葉が現れ始めました。でも、全山紅葉というにはもう少し時間がかかるようです。 |
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イロハ紅葉 (瑞牆山荘) |
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春は桜、秋はもみじ 日本の四季を彩る代表ですが、 ○紅色や黄色など紅葉の色が木の実や種の実の連想 ○暖を取る「火」の色 ○山頂から麓へ紅葉が降りることから神の降臨 ○もみじ葉の形が鉾に似ていることから国家や民の守護神 などのイメージから日本人のもみじを愛好するようになったのではないかと考えます。 紅葉の名所は全国に多数ありますが、古代からの名所は竜田山。その紅葉を流す竜田川は万葉集にも詠われていますが、有名なのは古今集に詠われた和歌 千早振る神代もきかずたつた川 からくれなゐに水くくるとは (在原業平) 年ごとに もみぢ葉流す 竜田川 みなとや秋の とまりなるらむ (紀貫之) もみぢ葉の 流れざりせば 竜田川 水の秋をば 誰か知らまし(坂上是則) 竜田川 もみぢ乱れて 流るめり 渡らば錦 中や絶えなむ(読人知らず) これらの和歌を下敷きにして作られた能が「竜田」。金春禅竹の作といわれています。 竜田神社の由来、巫女と高僧との「人と神の契約」かかわる問答、吹き乱れる紅葉葉の中で秋をつかさどる女神竜田姫の降臨と天への帰還など、色彩感豊かな能です。 ちなみに、今回のタイトル「紅色を愛でる」は「竜田」の一節から取ったものです。 |
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ということで・・・・ |
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竜田(舞囃子)を舞いました |
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11月3日(文化の日)、新宿区神楽坂の矢来能楽堂で、大鼓、小鼓、笛、太鼓の囃子方をバックに、そして金春流の重鎮 本田光洋師の地頭で「竜田」のクセ・キリ(後半部)と神楽という舞を演じました。今回は能面や衣装を着けずに舞いました。神楽舞は女神(竜田姫)が舞います。 最初は荘重に、次いで軽快に、最後は脱兎のごとく・・・なかなか忙しい舞でした。 そして・・・「歌舞の菩薩」が現れて、お叱りを受けました。 詳しくは・・・ここをクリックしてくささい。 その他: 今年は学生が能「経政」を演じました。一昨年私もこの曲を演じました。(ここをクリック) 番組表: ここをクリック (印刷用はこちらをクリック) |