温室育ち

風花、雪花、そして湯の花を除くと、今は野や山に花の少ない季節ですが・・・街にはありました。
ガラスと鉄骨で作った人工空間の非自然環境-温室にです。
燦々と注ぐ太陽の熱と化石燃料を焚いた熱で花たちを騙して、その場所、その季節にないはずの花を咲かせます。

温室は、本来は熱帯植物などの貴種の花々を観賞するための施設ですが、花の育苗にも使われています。

 合歓(ネム)

初夏、海岸近くの乾いた土地でよく見ますが、この花は寒中の花。温室の中で見ました。マメ科の花で洪水の跡など荒れた土地に真っ先に花をつけます。昨年7月、北茨城から福島県いわき市にかけての常磐線沿線でも。ひょっとすると津波に襲われた土地だったのかもしれません。

漢字名の「合歓」は、この木が中国では夫婦和合の象徴とされていることから・・・アツイ、アツイ。

和名の「ネム」は、夜葉が閉じることから、「眠りの木」がなまったもの。
美智子皇后が作詞された子守唄に「ねむの木の子守歌」があります。 
  ねんねの ねむの木 眠りの木
  そっとゆすった その枝に
  遠い昔の 夜(よ)の調べ
  ねんねの ねむの木 子守歌

             (世田谷区瀬田フラワーランド)

    大紅合歓 (オオベニコウガン)    

ネムはもともと熱帯の植物でしたが、寒さに強かったため温帯地方にも広がりました。 日本のネムはうすピンクで淡い色ですが、熱帯の仲間のは花冠も大きく色も鮮やかです。
能や歌舞伎の「猩々」や「石橋」の赤頭のようですね。


        (クィーンズランド ブリスベーン植物園)

温室の主役は「珍しい花」。その代表格は熱帯ラン、オーキッドです。19世紀、イギリスでラン栽培熱が高まり、オーキッドハンターと呼ばれる野生ラン採集人が東南アジアや中南米に多数派遣されました。採取した野生ランは交配・品種改良・培養され、様々の色・形のランが生まれました。今や式典や行事に欠かせない花として一大花産業に成長しています。その元締めの一つにサンダース商会があり、そこで作成した「サンダース・リスト」はあらゆる種類のランを登録しており、ランの戸籍簿として知られています。(日本にも春蘭や敦盛草など野生のランが230種ありますが、心無いハンターのため、多くが絶命寸前になっています)

デンドロビウム
いずれも シドニー植物園で
    
ルーブル美術館のピラミッドのような温室
この芝生には(日本なら、「立ち入り禁止」のサインがありますが)「どうぞお通りください」とあります。

カトレア
      シンビジウム     

    いずれも 世田谷区瀬田フラワーランドで    
パフィオペディルム
この種類は敦盛草のように下の唇弁が壺状になっています。
食虫植物のウツボカズラに似ていますね。

ウツボカズラ (シドニー植物園)
ファレノプシス(胡蝶蘭)
(妖精のようです)
(アフロディティス-女神の名がついています)

デンドロクリム


 パフィオペディルムとファレノプシス、デンドロクリムいずれも  つくば植物園

つくば植物園には世界最大のランもあります。
    
    グラマトフィルム・スペキオスム
     長さ7メートル、重さ2トンの大物です。めったに開花しないとか。


温室内はランばかりではありません。
  アマゾンリリー

リリーの名が付いていますがユリではありません。キンポウゲの仲間。熱帯雨林に咲く妖艶な花です。

 (つくば植物園)

眉刷毛万年青(マユハケオモト)

別名(学名): ハマエンサス

これもオモトの名は付いているものヒガンバナの仲間です。
花の形が化粧道具の眉刷毛(昔は眉を剃って墨で描いていた)
に似ていることから。今では化粧ポーチに入れている人はいなでしょうね。



(神代植物公園温室)
    アンスリューム
    別名: 大紅団扇(オオベニウチワ)

お花屋さんの店先でよく見かける花です。赤いのは葉で、花な黄色い穂状の部分です。里いもの仲間で、いかにもトロピカル。

(新宿御苑温室)

熱帯睡蓮(ネッタイスイレン)

日本の睡蓮は薄紅色ですが、熱帯睡蓮は紫色や黄色と原色に近い色からこのように薄い色まであります。いずれも単色で薄暗い池の水面で日差しを受けて輝きます。印象派の画家、モネは日本の睡蓮を自分の池に移入して大作の睡蓮を何枚も書いたのですが、熱帯睡蓮ではあの微妙な色は出なかったのではないでしょうか。

    (シドニー植物園)


            日本睡蓮
          (文京区 小石川植物園)

そして最後に花も実もおいしい   グズマニア    
パイナップルの仲間です。

パイナップルの仲間には不思議な花が多くあります。アンデスの4000mを超える高原に育つプヤ・ライモンディ は、酷寒乾燥の土地に100年かけて成長します。最後の数週間で10mもの花穂を伸ばし、3000個の花をつけ、ハチドリを呼び寄せて受粉します。受粉が終わるとすぐに枯れてしまいます。


  (シドニー植物園)

   


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これまで約20施設の仮設住宅や避難所にお送りしましたが、仮設住宅はまだ何百か所もありますので皆様のご協力をお願いします。
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