8月も半ばを過ぎると、高山ではもうリンドウなど秋の花たちが咲き始めます。花たちは涼しい風に乗って山道を下り、谷や沢で一服しながら、里や街へ降りてきます。そして、秋は風のシーズン。秋風、野分(台風)、つむじ風に木枯し。疫病も風に運ばれてきます。見た目にはそよそよと気持ちよさそうな風も、花撮りフォトグラファーにとっては難敵。風が止むまでじっと辛抱です。 前回紹介した春・夏の花は北日本の山が多かったので、秋は、地球の裏側も含めて西の山々の花をご紹介します。 |
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雨飾山へは沢をいくつか超えて登る。渡渉点で休憩を取り、沢水で喉を潤す。花もまた目を潤してくれる。
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秋の花には、キク科と並んでシソ科の花も多い。その一種で絶滅危惧種のマネキグサを逗子から南に延びる三浦アルプスで見たというネット情報を頼りに、台風が来る前にと出かけた。森戸川沿いの遊歩道から急坂を登って尾根道に出る。標高は高いところで210mしかないが、ピークが次々続き、結構厳しいうえに、滑りやすいし、眺望もない。花がなければ来ることも考えないところだ。4時間探したが・・・見つからなかった。そういえば、あの情報は10年前のものだった。 それでも・・・犬も歩けば何とやらで・・・・
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ヒガンバナ(彼岸花: ヒガンバナ科) 毎年、秋分の頃になると、どこからともなくにゅっと頭をもたげて赤い花を咲かすヒガンバナ。彼岸(極楽)に咲くから曼珠沙華(マンジュシャゲ)とも、地獄の業火のようだから地獄花とも呼ばれる。日を違えず律儀に咲いて、墓参りを忘れる子に代わり親の菩提を弔ってくれる。 花が開花期を知るのは日照時間の長短や温度差を感じるからだという。昼夜の長さが同じになる秋分に咲くヒガンバナは日照説を支持しているように見えるが、東北では8月末に咲き、関西では9月下旬、九州は10月初め、と咲く時期にズレがあるため、どうも日照時間より温度差を感じて咲くという説が当たっているようだ。 (世田谷区羽根木公園) |
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ヒガンバナ科(学名ではアマリリス科)に属する花は多い。スイセンやハマユウ、最近では元ユリ科であったネギやニラ類までこの科に入る。アマリリスやアガパンサスなど園芸種として外国(南アフリカ)から持ち込まれた花も多い。そして、南半球のヒガンバナの仲間は、半年ずれた春分の頃に開花する。 日本で新型コロナが広まり始めた3月中旬、南半球のヒガンバナを求めて、南アフリカ・ケープタウンへ飛んだ。 |
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ブルンスブギア・マルギナータ (Brunsvigia marginata) 地面から直立して生え、3cmほどの6弁の小花が密着してバレーボール大の火球になる。花弁の表面には金粉を撒いたような照りがある。晩夏、極度に乾燥した草原に現れる真紅の火種だ。 実際、この時期はケープ州では野火が頻発する。風による枝の摩擦や雷などでの自然発火、時には投げ捨てられた煙草が原因で燃え広がる。そして、プロテアなどの低木ブッシュ帯を焼き尽くす。そのあと、ブルンスブギアやハエマンサスなどのヒガンバナ科の花々が芽を出し、陽光と灰の養分を独占して不毛の土地に大きな花を開く。リュウコスペルマなど焼けた低木の果実も、ユーカリのように炎によって堅果が割れ、はじめて発芽可能となる。
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2018年春(9月)アヤメを見るため、この地を訪れたとき、枯れかけた幅広の葉とボール状の枯れた不思議な花を見た。それ以来気になっていて、再訪の機を窺っていた。
(南アフリカ西ケープ州ニューウッドビル) |
ブルンスブギア・ボスマニア (Brunsvigia bosmaniae) | ||||||||||||||||||||||||
← ブルンスブギア・オリエンタリス (Brunsvigia orientaris) 丈が40~50cmと大型のブルンスブギア。花弁が茎から燭台のように伸びているので、シャンデリア・リリーとも呼ばれている。 (南アフリカ西ケープ州ウエストコースト国立公園) |
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ブルンスブギア・ストリアタ(Brunsvigia striata) | クロッシネ・フラバ (Crossyne flava) | ||||||||||||||||||||||||
ブルンスブギアの近縁種で、黄色い花をつける。 (南アフリカ西ケープ州ニューウッドビル) ←(南アフリカ西ケープ州シトラスデールの南) |
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南アフリカで日本のヒガンバナに最も近いのがネリネ。残念ながらネリネは見られなかったが、代わりにアマリリス。その名も 「美しき乙女」 アマリリス・ベラドンナ (Amaryllis belladonna) (南アフリカ西ケープ州ステレンボスのホテルの庭)
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南アフリカは今、夏真っ盛り。新型コロナの変異型が猛威を振るっていて都市はロックダウン中。旅行業者は完全に仕事はないと嘆いている。夏に咲く「デサ」という素晴らしいランがあるが、コロナが収まるまで、しばらくお預けだ。それまでは花も人も無事でいてほしい。 | |||||||||||||||||||||||||
前回、タマガガホトトギスとヤマジノホトトギスを紹介したが(下の「前回の花便り」からリンクあり)、ある能楽師の方から、南九州に珍しいホトトギスがあるとお聞きした。10月初め、台風が過ぎるのを待って宮崎へ向けて飛び立った。 |
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初夏に鳴くのは鳥のホトトギス。杜鵑、不如帰、時鳥、子規、杜宇、蜀魂、田鵑など様々な漢字が当てられている。甲高い声で『キョ、キョ、キョキャーキョ』と鳴き続け、口内が赤いことから「鳴いて血を吐くホトトギス」と言われる。このことから、俳人、正岡子規は結核で吐血したことで、「血を吐くような句を読む」とホトトギスを自分の俳号にした。一方、花のホトトギスは夏から秋に咲く。もちろん、鳴きはしないが漢字は杜鵑草があてられる。これは、花弁の斑点が鳥のホトトギスの胸毛の模様に似ているためだ。(中国では、杜鵑花はシャクナゲのこと) |
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その他、今回の南九州の旅で会った花たち。
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愛知県と静岡県の県境に沿って標高300~500mほどの石灰岩の山並みが続く。湖西アルプスとも呼ばれ、地元の人々の憩いの場所となっている。 |
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← カワミドリ(河碧: シソ科) 葉を揉むとハッカの香りがする。薬草としても利用され、解熱、頭痛、消化不良、食あたりに効果があるという。 (豊橋市石巻山山頂: 標高358m)
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ここは天竜川と豊川に挟まれた地域で、東日本と西日本を分ける中央構造線が通っている。 日本列島が形作られたとき、活発な地殻活動で深層にある蛇紋岩など塩基性の強い岩石が地表に現れているところである。アポイ岳、早池峰山、白馬岳、至仏山など花どころと同じ土壌で、一般の植物は育ちにくいため固有の花々が多い。 |
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(いずれも 愛知県新城市雨生山) | ||||||||||
11月下旬、本州の花も終わったので、最後の花旅で八重山諸島の石垣島と西表島を訪ねた。 この季節でも多くの花が咲いていたが、亜熱帯地方では花に季節感がないため、「秋の花」としてではなく、冬または早春の花として、次回案内したい。予告編として、一輪だけご紹介します。 |
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タイワンエビネ (台湾海老根: ラン科) 八重山諸島と台湾でしか見られない地生ラン。花弁のようにに見えるのは苞葉で、花はその中にある。 湿った沢沿いにポツンポツンと咲く。 絶滅危惧種IBでもある。 (沖縄県西表島) |
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次回は冬から初春にかけての暖かそうな花をお届けする予定です。
★お礼: カレンダーチャリティへのご協力 ありがとうございました
昨年末、「2021年四季の花々カレンダー」を案内し、東日本大地震震災遺児の奨学金支援としてチャリティへのご協賛を募りましたところ、111名の方からお申し出をいただき、合計336,000円のご寄付をいただきました。改めましてお礼申し上げます。昨年末、運営団体の(財団法人「みちのく未来基金」へ送金しました。財団からの受領証明書をご協賛の方にお送りしておりますが、お手元に届いてますでしょうか。2月15日からの確定申告で、所得税控除を受けられますのでご利用ください。もし、まだ届いてないようでしたら、至急お知らせ下さい。
2015年より始めたチャリティ活動は6年が経過しましたが、お陰様で寄付金額は累計100万円を突破しました。皆様の善意とご協力の賜物と感謝しております。当該奨学金は地震のあった2011年に母親のお腹にいた胎児までが対象になります。あと14年、私の体力・気力が続く限り継続してゆきたいと考えていますので、引き続きご協力賜りますようお願いいたします。
★ご案内: 「2021四季の花々カレンダー」の残部があります
チャリティで使いました「2021年四季の花々カレンダー」に少々残部(20部ほど)があります。送料(5部まで200円)をご負担いただければ、お送りいたします。ご希望の方は、matsunaga*insite-r.co.jp(青字部分をクリックするか、*を@に書き換えて)までお知らせください。
できれば1部1,000円でご購入いただければ、代金分を購入者のお名前で(財団法人)「みちのく未来基金」へ寄付し、震災遺児の奨学金支援に使わせていただきたいと思います。
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