昨年(2023年)、2月末から3月にかけてイスラエルと北キプロスを訪ね、春の花を探しました。イスラエルではガザ地区を近くに望むところまで行きましたが、窪みに隠してあった戦車の上の兵士が手を振って、写真を撮らせてくれました。今、ハマスの攻撃を受け、あの若い兵士はどうなったかと気懸かりです。
6月下旬から7月には4年ぶりに中国四川省・青海省で青いケシを観察。人口の少ない山間部にも高速道路網が張り巡らされ、観光地には高速鉄道が建設されていました。林立する看板にはスローガン「青山緑水就是金山銀山」が大書されていましたが、それとは裏腹に、工事で山は削られ、トンネルが掘られていて、青いケシなど環境変化に弱い植物は姿を消していました。
各地で撮影した花で四季の花カレンダーを作成しました。
表紙 | 撮影データ 1.花の名 学名(英語名) 科名属名 2.撮影地 3.解説 |
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パラキレギア・ミクロフィラ Paraquilegia microphylla (Royle) J.Drum et Hutch. キンポウゲ科イチリンソウ属 中国チベット拉薩郊外 ヒマラヤからチベット、カザフスタン、ロシア極地に分布する。ヒマラヤ・チベットでは標高3500m以上の高地で見られる。多数の花が集まり、クッション状となる。学名にオダマキ(aquilegi)を含むが、距がなくニリンソウ(Anemone)に近い。この花の近くに青いケシを見ることが多い。本種もM・トルクァタの近くで見つけたもの。 |
一月 |
オルキス・イタリカ
Orchis italica Poir.(Naked Man Orchid) ラン科オルキス属 北キプロス・エセンテペ ランは熱帯に限らず、半乾燥性気候の地中海沿岸にも広く分布する。本種は英語名で「裸男のラン」と呼ばれるが、その理由は…花をルーペで見ると、深く切れ込んだ両足のような花弁の間に小さな突起がぶらぶらと。 印刷用はここをクリック。 |
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二月 | オフィリス・コッチイ Ophrys kotschyi H.Fleischm. & Soó (Bee orchid) ラン科オフィリス属 北キプロス・アンティフォニティス教会 ランは被子植物のラストランナー、最後に現れた種だ。先輩植物達と熾烈な生存競争を繰り広げ、知的とも思える方法で繁栄してきた。この種は花弁を雌蜂に似せることで雄蜂を騙し、まんまと花粉を運ばせている。 印刷用はここをクリック。 |
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三月 |
アネモネ・コロナリア
Anemone coronaria L. キンポウゲ科イチリンソウ属 イスラエル・メロン山 コロナリアは冠の意味。花の中心に白い輪ができることから。若い花にはないが、花粉が成熟すると現れる。木々が葉を広げるころ、カタクリと同様、地上から姿を消す春の妖精(スプリング・エフェメラル)である。 印刷用はここをクリック。 |
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四月 | シクラメン・ペルシクム Cyclamen persicum Mill. サクラソウ科シクラメン属 イスラエル・メロン山 カタクリのように花弁を最大限反らして咲く。日本では初冬から早春に開花し、篝火(かがりび)花とも称される。原産地は地中海東部で、春咲と秋咲があり、色も白から濃いピンクまでバラエティ豊かである。 印刷用はここをクリック。 |
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五月 |
イリス・マリアエ
Iris mariae Barbey (Negev iris) アヤメ科アヤメ属 イスラエル・北ネゲブ ハナショウブやカキツバタなど、日本のアヤメは水辺に多いが、世界のアヤメの多くは乾燥した土地に育つ。本種の仲間(オンコキクルス節)は地中海東部に見られ、園芸種ジャーマンアイリスの名で店頭に並ぶ。 印刷用はここをクリック。 |
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六月 |
アポイキンバイ(アポイ金梅)
Potentilla matsumurae var. apoiensis Toyok. バラ科キジムシロ属 北海道様似町アポイ岳 日高山脈には、地球の深層にあった橄欖岩が露出している山がいくつかある。塩基性の強い岩石は植物の発達を妨げるため、特殊な植物が育つ。アポイ岳はその代表例で、アポイアズマギクなど固有種の宝庫である。 印刷用はここをクリック。 |
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七月 |
メコノプシス・プニケア
Meconopsis punicea Maxim. (Red alpine poppy) ケシ科メコノプシス属 中国青海省久治県桑赤山 青いケシの仲間(メコノプシス属)の花色は、青色に限らず、紫や白、黄色など様々であるが、赤色は本種のみである。中国西部の四川省や青海省に分布し、遠くから見るとまるで中国国旗がはためいているようだ。 印刷用はここをクリック。 |
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八月 |
メコノプシス・ラケモサ
Meconopsis racemosa Maxim. ケシ科メコノプシス属 中国四川省翁達県老折山 青いケシの代表種の一つで、花の青さは逸品である。花茎が茎から出る総状花序(ラケモス)が名の由来であるが、下部から開花する総状花序の定義と異なり、この仲間(メコノプシス属)は先端から開花する。 印刷用はここをクリック。 |
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九月 |
ヒナノキンチャク(雛の巾着)
Polygala tatarinowii Regel ヒメハギ科ヒメハギ属 福島県田村市あぶくま洞 丈が15㎝ほどで花序の大きさは小指大。花序の下に2~3㎜の果実が付くが、この形を昔の小銭入れ(巾着)に見立てて名付けられた。東南アジアや日本に広く分布するが、石灰岩の崖地に安定的に育つ。 印刷用はここをクリック。 |
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十月 |
エンシュウハグマ(遠州白熊)
Ainsliaea dissecta Franch. et Savat. キク科モミジハグマ属 愛知県新城市比丘尼の丘 くるくる回る風車の羽のようだが、実は1小花に3枚の花冠が付いていて、それぞれが5つに深く切れ込んでいるため、15枚の花冠のように見える。白熊(ハグマ)とは高僧が使う仏具の払子(ホッス)のこと。 (訂正:10月19日を「国際反戦デ―」としていますが、正しくは10月21日です) 印刷用はここをクリック。 |
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十一月 |
リンドウ(竜胆)
Gentiana scabra var. buergeri (Miq.) Maxim. リンドウ科リンドウ属 高知県高知市牧野植物園 生薬の熊の胆よりも苦いことから名付けられた。根には清熱、消炎の薬効がある。また、民間では苦味健胃薬に用いられる。この仲間のオヤマリンドウは牧野が自らの名を付け、(Gentiana makinoi)と命名した。 印刷用はここをクリック。 |
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十二月 | ヤハズマンネングサ(矢筈万年草) Sedum tosaense Makino ベンケイソウ科マンネングサ属 高知県高知市鏡川 本種は牧野富太郎の命名。葉の先端部に小さな窪みがあり、弓の弦をかける矢尻に似ていることからこの名を付けた。また、窪みのないマルバマンネングサも牧野の命名である。 印刷用はここをクリック。 |
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裏表紙 | キバナノヒメユリ Lilium callosum Siebold et Zucc. var. flaviflorum Makino ユリ科ユリ属 沖縄県那覇市 日本で最小のユリ。絶滅危惧種であるが、適度に人の手の入った草地に育つ。沖縄では人家の近くにわずかに残る。 |
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