一昨年に続いて、2度目のチベット訪問です。今回は、ネイチャーツアー専門会社の元社長T氏との二人旅。T氏は30年以上、自然観察ツアーの開発に携わり、現地旅行社と太いパイプを持ち、青いケシについても造詣が深い花のエキスパート。 お陰で日本人として初となる青いケシを観察できたり、超レアなアヤメを見つけたりと大変成果の多い、また『花良し、天気良し、友良し』と3拍子揃った旅でした。いつもならトレッキングから帰ると体重が5Kg以上減っているのですが、今回はホテル泊、車移動。その上、美味しいものもたくさん食べて痩せ知らずでした。 一方、現地では高速道路や橋、鉄道などの建設が盛んで、「米中摩擦による経済不況などどこ吹く風」の西部大開発が進行中でしたが、その陰で、チベット系住民の個人事業や中小企業に統制の圧力が強まりつつあるの感じました。 (一昨年のチベットトレッキングはここをクリックしてください)
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今回のコース (1) 成都 - 林芝 - セチ・ラ - トンバツェ村 - 林芝-米拉 - ラサ-林周県-甘丹寺-ラサ-成都 (7月11日~19日) |
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(1)セチ・ラ(峠)、トンバツェ村の花々 一昨年の6月中旬、この峠を尋ねたときはシャクナゲやサクラソウが満開で、青いケシもM・バイレイやM・シンプリキフォリア、そして黄色い花をつけたM・スルフレアを見ることができた。今回はそれより1カ月遅かったが、前回と同じ種類の花も、そして違う青いケシも楽しむことができた。 |
メコノプシス・バイレイ (Meconopsis baileyi) セチ・ラへ向かう途中、T氏がトイレ休憩で小用中、ふと崖下を見ると、青い花が・・・。急坂を下ってみると開花したばかりのみごとなバイレイ。 6月中旬が盛りと見て、あまり期待していなかったので、思わぬ収穫だった。 M・バイレイは1913年、英国将校F.M.Bailey大佐がヤルン・ツァンポ河に近いロン・チュー渓谷トンバツェ村で見つけ、後にキングドン・ウォードが種を採集し、英国に青いケシブームをもたらした。 (国道318号 標高4000m) |
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峠を観光バスが走り抜けてゆくが、 乗客は誰も青いケシのことに気付かない。(彼らが関心を持つようになると青ケシは根こそぎ取られてゆくだろう!?) |
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セチ・ラには青いケシしかないわけではありません・・・ |
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(2)林芝-米拉-墨竹工卡-ラサ 昨年全線開通したラサ-林芝を結ぶ高速道路、林拉公路を西にひた走る。丸一日かかっていた行程がわずか4時間でつながる。「熊注意」の道路標識もあるが、北海道と違って熊より車の方が多そうだ。途中から一般道に降り、米拉山へ登る。以前は峠にレストランもあって賑わっていたが、トンネルが貫通したため、訪れる車も減り、レストランや有料トイレも閉鎖されていた。将来は廃道になるかもしれないが、人の手による環境破壊が止まる分、花には好都合かも。 |
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果実 | ||||||
米拉山を下ると空がどんどん晴れてくる。陽射しも出てくる。ラサの上空には青空が広がっている。これはいい兆候だ。 そして刈入れを待つチンコー麦(裸麦)と菜種の畑。この時期のチベットの風物詩だ。 |
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(3)ラサ周辺 市内のホテルを起点に、北部の山々、林周県、甘丹寺周辺で花を探した。目的はもちろんM・トルクァタ。幸い探索初日に見つけることができたが、翌日、山は雪。一日ずれていたら、雪に隠れ、見つけることはおろか、その場所に到達することも困難だったかもしれない。 |
M・トルクァタの生育環境 鉄分の混じった花崗岩の大岩(ボルダー)の間のわずかな土壌に根を下ろす。周囲は荒涼とした岩の崩落地帯。 川が流れる斜面はヤクの放牧地となっていて、ヤクの糞に集まる小蠅がポリネーター(花粉媒介者)となっている。 花の右の枯れた茎は昨年の花。その下には来年開花するだろう幼生が見える。 |
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(4)四川省西北部 | ||||||||||||||
2013年に訪ねて以来、6年ぶりの再訪である。西部大開発のお陰でどの街も整備されて大変きれいになった。何より驚いたのは、それまで丸一日かかっていた成都-康定間が、高速道路と大渡河を跨ぐ瀘定大橋の完成で4時間でつながったことだ。長大なトンネルを掘る技術は日本にも劣らないだろう。しかし、2008年5月の四川大地震で露見したように、手抜き工事で建物が多数倒壊したし、また、転落した新幹線車両を埋めて隠すような国なので、災害の際は100%安全と言い切れない怖さがある。 | ||||||||||||||
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康定から西へ20Kmほど行くと折多山峠(標高4300m)。この峠で四川盆地とチベット高原を分ける。ここを超えると気候も変わり、からっと乾燥した気候となり、青空も広がる。植生も変わり、青いケシが現れ始める。青いケシは、以前は峠の南側斜面でもよく見られたが、今や一大観光地となった。観光案内所もでき、駐車を待つ車が数珠つなぎ。観光客の踏み荒らしで青いケシも激減した。 諦めて峠を少し下ると西向き斜面に青い花を見つける。車を停めて探すと・・・
青空が広がっているかと思うと急に雨が降り出し、そしてまたすぐに晴れ上がるのが、東部チベット高原の特徴。 牧場の一角では大勢のチベット人が集まり、野外結婚式が執り行われていた。式の後、新婚カップルは花で飾り立てた車で披露宴会場までパレード。まるで、一昔前のアメリカ。 金ぴかの僧院(ゴンパ)のある塔公(ターゴン)出て、しばらく走ると、崖の中腹に青い花がちらりと目に入る。車を停められる路肩を探し、急いで戻り、崖によじ登る。 |
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メコノプシス・プラティ(Meconopsis prattii) (塔公の北 標高3760m) | ||||||||||
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四川省の花旅の第一の目的は、実は、青いケシではなかった。あるアヤメを探すこと、それも黄色いアヤメだ。 南半球の南アフリカにはアヤメの仲間、モラエア属があり、黄色い花もありるが、北半球ではヨーロッパ原産の黄菖蒲(Iris pseudacorus) やトルコのアイリス・ダンフォルディア(Iris danfordiae)くらいなもの。そのうえ、外花弁も内花弁も開平する不思議な花。1922年スウェーデン人医師が採集したが、不完全なままで詳細はわかっていなかった。その後1992年に英国人登山家がミニヤコンカ付近で写真に撮った。それを元に植物研究家の荻巣樹徳氏が2002年にミニヤコンカの西で再発見。(荻巣樹徳「幻の植物を追って」から) 昨年、別の場所で偶然この花を見つけたガイドからの報告で、勇躍、探索することになった。 |
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この季節、 短い夏の太陽の恩恵を争うかのようにさまざまの花が一斉に開花する。野はまさに百花繚乱。 | ||||||||||||
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夏、暑苦しいオレンジ色の花をたくさんつけるノウゼンカズラ(凌霄花)の仲間。こちらは涼しげだ。 | ||||||||||||
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(おしらせ)
★能「融(とおる)」を演じます。
私の属している春綱会(金春流能楽師 山井綱雄師の社中)が初めて国立能楽堂で発表会を開きます。
今回は私のを入れて能が3番、舞囃子が10番と華やかな会になります。(地謡、囃子方は皆プロです)
昨年父が亡くなった時、ネパールの山中にいて葬儀に参列できませんでした。私なりの葬送(追善)としてシテを演じます。
また、母の七回忌、そして私自身の古希祝いも兼ねて舞います。
ご興味があればお運びください。
日時: 2019年9月22日(日) 午前10時~午後6時30分 (私の出番は午後0時30分頃から1時間半)
場所: 国立能楽堂 JR千駄ヶ谷駅徒歩5分
入場無料。事前許可のない撮影、録音、録画はできません。
あらすじ | |
都へ上ってきた旅僧が六条河原の院あたりで休んでいると、桶を担いだ老人が現れる。この地の謂れを聞くと、左大臣源の融の屋敷跡で、昔、融が東北の塩釜の風景を都に作り、塩を焼かせて、一生を遊び暮らしたが、今は誰も面倒を見ていないと答え、昔を懐かしみ、自らの老いを悲しむ。また、僧の尋ねに応じて、音羽山や大原、嵐山など都の名所を楽し気に教える。 そして桶を池に入れ、塩を汲むかと思うと、立ちどころに消え失せる。 |
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僧は通りがかった町人に、この話をすると、町人は「それは源融の亡霊」だと教える。夜半、 僧の前に源融の亡霊が現れ、生前の豪奢な遊びの様子を語り、舞い、名残を惜しみつつ、明け方の月の中に消えてゆく。 (写真は山井綱雄師、撮影は辻井清一郎氏) |
★「登山時報」にブータンの青いケシを掲載しています。
昨年5月から日本勤労者山岳連盟(労山)の機関誌「登山時報」に、2年前(2016年)に訪れたブータンの青いケシについて文と写真を掲載しています。前回ご案内した以降の分(2018年10月号~2019年8月号)のページをWebページに掲載し、閲覧できるようにしましたので、ご興味があれば、それぞれの号をクリックしてご覧ください(PDFファイルです)。
2018年10月号
2018年11月号
2018年12月号
2019年1月号
2019年2月号
2019年3月号
2019年4月号
2019年5月号
2019年6月号
2019年7月号
2019年8月号
2019年9月号(最終回)11月からは中国の青いケシについて連載を予定。
2018年5月号~2018年9月号はこちらをクリックしてください。(前回ご案内したWebページの最下部にあります)
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2019.9.6 update